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「先輩への“気遣い”に苦労」「女」のホンネ

女性特有の対人関係の悩みは一体どこから来るのでしょうか? 精神科医の水島広子さんは、女性の嫌な部分をかぎかっこ付きの「女」と呼び、深層心理に迫る鍵と位置付けます。連載「『女』のホンネ」では水島さんが「女」に注目しながら、トラブルの原因や処方箋を解説します。

■先生への質問

 女性ばかりの職場に転職しました。「先輩を立てる」という絶対ルールがあり、苦労しています。例えば、お菓子を配るとき、広いフロアを行き来しながら、必ず社歴順に配らなければなりません。休日に先輩から理不尽な呼び出しがあったときも、従うしかありませんでした。性格に難があっても、営業成績が良くなくても「先輩」というだけで、上に立てて接しなければならず、そうしなければ陰口を言われます。男性もいた前の職場はもう少し合理的でした。割り切れない思いをのみ込んで「はい」と従っています。

一つの仕事と受け入れ
 これは職場の文化の話ですね。抜け駆けを許さない「女」の特徴ゆえ、とも言えます。年功序列をきちんとしておけば、そのラインに乗っている限り、自分だけが取り残されることがないからです。自己肯定感の低い人にとって、これはそれなりに安心できる環境だと言えますね。

■体育会の厳しさ
 もちろん、男性の文化にも似たようなところがあります。例えば、体育会など。上下関係が大変厳しいことで知られていますね。職場でも、組織としての上下関係を厳しく規定しているところもあります。厳しさは職場それぞれだとも思いますが、終身雇用・年功序列型社会だったときの男子社会もある意味では同様だったと言えるでしょう。

 さて、この職場の文化とどう関わるか、ですが、最もスッキリするのは、「そういう面倒な人間関係も含めて、この職場」と割り切ることです。運動をしたくて体育会に入部したのに、むしろ上下関係の方が中心、というような状況に似ています。運動をするためには上下関係を守らなければならない。ですから、本当にやりたいこと(運動)と上下関係をセットにして受け入れるのです。
 
 職場の文化を受け入れてしまうのが最も無難ですし、今もそうされているわけですが、同じことをするのでも、「どうして?」と不満を抱きながらするのではなく、「今の職場における一つの仕事」と能動的に取り組めば、自分の精神的自由が少し増えると思います。

■「天然」で乗り切る
 もちろん、割り切ってしまって、文化になじまず陰口を言われるのも一つのやり方です。「陰口を言われます」とのことですから、実際陰口を言われている人を見たことがあるのでしょう。そうであれば一人ではありません。陰口を言われる人の生活を観察して、自分にまねできそうか、親しくなれそうかを見てみるのもよいと思います。

 「変わり者」という烙印(らくいん)を押されるのも悪くありません。愛想だけは良くして、「敵」ではないということを示しつつ、ルールに従わない、というやり方です。いわゆる「天然」と言われるタイプですね。何か注意されたら明るく「ああ、そうでした。ごめんなさい忘れっぽくて」とか「一度に複数のことに取り組めないタイプなので、どうしても抜けちゃって」と元気に謝っていく、というやり方です。「あの人には期待しても無駄」と思われれば、しめたものです。

■転職も視野に
 そもそも、真面目でやる気がある人ほど、こういう職場に苦手を感じると思います。「理不尽」「性格に難がある」「営業成績が良くない」などのキーワードを拾ってみると、常識的な理屈を大切にする方なのだと思います。そういう方は他の職場でもうまく勤まるもの。転職は常に視野に入れてよいでしょう。

 現状の改善を求めたい気持ちはよくわかりますが、ここまで文化が仕上がってしまっていると、なかなかそうもいきませんね。変えようとすると「敵」認定されて、日々がつらくなると思います。

 人を変えることはできない、というのが原則です。しばらく「変わり者」風に振る舞って、逆風が強くなったら転職する、くらいの大きな見通しを立てておくのもよいのではないでしょうか。また転職?と不安に思うかもしれませんが、できるだけ自分に合った文化の職場を見つけよう、という指針を持っておけば、転職の際の判断もうまくできるように思います。

 ■水島さんが定義する「女」
性別としての「女性」を意味するのではなく、嫉妬深い、表裏がある、人のことを決めつけたがる、群れたがる、などいわゆる「女の嫌な部分」と言われるような性質のこと。男性に選ばれて初めて価値が生まれる、気が利くことを求められる、などの背景から作られてきた傷と考えられる。女性だけでなく、男性にも見られる性質である。
 ■水島広子さんの略歴
みずしま・ひろこ 精神科医。対人関係療法専門クリニック院長。慶応大医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。同大医学部精神神経科勤務を経て、2000年から2期5年間衆院議員を務めた。「女子の人間関係」「怒りがスーッと消える本」など著書多数。ことし1月、連載中の「『女』のホンネ」などを加筆修正した新著「困った悩みが消える感情整理法」をさくら舎から刊行した。1968年東京生まれ。

■質問を募集します
水島さんへの質問を募集しています。職場や家庭での人間関係の悩み、不安やストレスに感じていることをお寄せください。200字程度にまとめ、名前、住所、電話番号、年齢、職業を明記の上、メール(bunka1@ma.kitanippon.co.jp)で送ってください。掲載時は匿名となります。

5月18日北日本新聞・webunより