メニュー

「企業子宝率」調査に賛否 県が導入3年目

子育て支援後押し/出産への圧力も

 従業員が在職中に持つ子どもの数を推計した「企業子宝率」の調査を県が始めて3年目を迎えた。子育てしやすさの指標として用い、子宝率が高い企業を毎年表彰している。職場での子育て支援を後押しする狙いだが、専門家からは「出産への圧力になりかねない」と調査を疑問視する声も上がる。(文化部・小山紀子)

 企業子宝率は、東レ経営研究所の渥美由喜氏が考案。福井県が2011年、全国に先駆けて調査し、子宝率が高く、子育て支援が充実した企業を「モデル企業」に認定した。認定されると、入札参加資格(建設工事)において加点し、県の融資制度で優遇した。

■6社を表彰
 富山県は16年に導入した。それまで子育て支援に積極的な企業を表彰する制度はあったが、あくまで自薦によるもの。客観的データに基づいて評価しようと、企業子宝率を採用した。

 県総合政策局少子化対策・県民活躍課は「企業の支援策の内容が子宝率にどう影響しているか、ある程度つかめる」と説明。子育てしやすい職場環境に関するアンケートやヒアリング調査も併せて行い、企業の取り組みを総合的に判断している。

 本年度は県内321社から回答があり、6社が表彰された。2月に発表された調査結果からは「従業員規模が小さい企業ほど、子宝率が高い」「子宝率が高い企業ほど就業時間の繰り上げ、繰り下げを運用で行っている割合が高い」といった傾向が出た。

■セクハラ?
 企業の意識向上に一定の効果がある一方、プライバシー保護の観点から批判の声もある。

 調査では従業員に子どもの有無や年齢を尋ねるため、富山大学講師の斉藤正美さん(社会学)は「結婚や出産はセンシティブな問題。会社にプライベートな事を聞かれたくないのが普通では」と話す。企業が子宝率を競うことになれば、性的少数者(LGBT)や、不妊に悩む人、未婚の人など子どもがいない人に心理的圧迫を与える可能性もあり、質問自体が「セクハラ、パワハラになりかねない」と危惧する。また、子宝率の算出方法の全貌が公開されていないことも「公的な指標のあり方として問題」と指摘する。

 人口学が専門の中央大の和田光平教授は「男性の出生行動を指標に入れた点は評価できる」としつつ、「統計調査では調査方法を公開するのが基本。科学性を担保するためには、他の人が検証できるようにするべき」と述べる。

■6県使用やめる
 企業子宝率は、福井、富山、静岡、山梨、三重、佐賀、鳥取、青森の8県で導入されたものの、すでに6県が調査をやめた。「もともと期限があり、終了は予定通り」(佐賀、福井、山梨)、「毎年調査しても数値はそれほど変わらない」(三重)などの理由のほか、静岡は「子育て支援の実態を反映できていない場合もある」として、男性の育休取得率や事業内保育所の有無などで総合的に点数を付ける独自の制度に変更した。現在使っているのは青森と富山の2県となった。

 県総合政策局少子化対策・県民活躍課は「子宝率はあくまでも目安の一つ。子宝率が高い事業所の優れた取り組みを紹介し、広げていくのが目的」と話し、今のところ19年度も継続する予定だ。


◆企業子宝率◆
 1人の従業員が在職中に持つことが見込まれる子どもの数。15~59歳の従業員の男女を対象に合計特殊出生率を参考にした方法で算出し、企業版の合計特殊出生率ともいわれる。

2019年2月23日北日本新聞・webunより