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「仕事に『女性の視点』期待され困惑」「女」のホンネ

女性特有の対人関係の悩みは一体どこから来るのでしょうか? 精神科医の水島広子さんは、女性の嫌な部分をかぎかっこ付きの「女」と呼び、深層心理に迫る鍵と位置付けます。連載「『女』のホンネ」では水島さんが「女」に注目しながら、トラブルの原因や処方箋を解説します。

■先生への質問


 社会人となって5年目、28歳の女性です。男性上司のアドバイスにいら立っています。当たり前のことを長々と事細かく説明したり、新人に聞かせるような内容だったりする場合が多く、「そんなこと知っています」と言い返したくなります。同期の男性社員にはそのようなアドバイスはしていないので、「女性だから軽く見られているのか」とさえ思ってしまいます。私が、その上司の仕事ぶりをあまり評価していないことも、いら立つ理由かもしれません。どうしたらストレスなく過ごせるでしょうか。


■メンツ守りたいから


 組織に属して仕事をしている方には、ある意味避けられない状況ですね。まだまだ日本の職場状況はこんなものです(もちろん先進的な職場もありますが)。
 男性上司の立場に立ってみましょう。「その上司の仕事ぶりをあまり評価していない」ということから、仕事ができない男性なのだと思います。


■女性の台頭が怖い

 一般に、社会における女性の台頭は、男性にとって怖いことです。「男市場」だったものが、女性も競争相手に入ってくる、ということですから。

 本当に自信のある、人間性も優れている男性であれば、「男だろうと女だろうと、仕事ができればそれでいい」という心境にあると思いますが、全ての男性がそうだというわけではありません。「仕事ができない男性上司」はどこにでもいるのです。そして、そういう男性たちは、「男なんだから少しでも優位に立ちたい」という意識のもとに、女性を(どれほど有能な人であっても)何も分かっていない新人社員のように扱うのです。

 確かに、「女性だから軽く見られている」ということもあるでしょうが、それ以上に、「自分より有能な女性に対して、どうしたら自分を守れるか」という恐怖に汲々(きゅうきゅう)としているのではないでしょうか。


■懸命にアピール


 この男性上司のアドバイスは、「俺は男だから偉いんだ」ということを懸命にアピールしている、と見ることができます。

 もちろん、そんなことに左右される必要はありません。自分に新たな情報をもたらさないアドバイスは、「女性が力をつけてきていて混乱している」上司の心境を単に現したものではないかと思うのです。

 「そんなこと知っています」と言ってしまうと、男性の「女性が力をつけてきていて混乱している」状態をさらに悪化させるでしょう。「そんなこと知っています」は中立的な言葉に思われますが、この立場に置かれた男性にとっては「バカにされた」ということになります。女性に嫌がらせをすることを考えるかもしれません。これは、女性にとってとても損です。


■心の健康優先


 ストレスを最小限にするためには、まずは上司に対する見方をきちんと確立することです。社会的には上司。だから、指示されたことはしなければならない。でも、人間的には、ただの自信のない人。だから不適切なことをダラダラと言ってくる。
 組織の中での「仕事」をきちんとすることと、無能な上司をむしろ気の毒に見る、ということを両立させればよいと思います。
 ちなみに、無能なのに説教がましい人は、反対意見に敏感です。「そんなこと知っています」と言ったら、余計ダラダラと話が続くでしょう。何のプラスもありませんね。

 メンツにとらわれた男性に対して、全くストレスなく過ごすのは難しいかもしれませんが、所詮(しょせん)はその程度のこと。自分の心の健康を最優先に考えましょう。

■水島さんが定義する「女」
性別としての「女性」を意味するのではなく、嫉妬深い、表裏がある、人のことを決めつけたがる、群れたがる、などいわゆる「女の嫌な部分」と言われるような性質のこと。男性に選ばれて初めて価値が生まれる、気が利くことを求められる、などの背景から作られてきた傷と考えられる。女性だけでなく、男性にも見られる性質である。
■水島広子さんの略歴
みずしま・ひろこ 精神科医。対人関係療法専門クリニック院長。慶応大医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。同大医学部精神神経科勤務を経て、2000年から2期5年間衆院議員を務めた。「女子の人間関係」「怒りがスーッと消える本」など著書多数。ことし1月、連載中の「『女』のホンネ」などを加筆修正した新著「困った悩みが消える感情整理法」をさくら舎から刊行した。1968年東京生まれ。

 

■質問を募集します

水島さんへの質問を募集しています。職場や家庭での人間関係の悩み、不安やストレスに感じていることをお寄せください。200字程度にまとめ、名前、住所、電話番号、年齢、職業を明記の上、メール(bunka1@ma.kitanippon.co.jp)で送ってください。掲載時は匿名となります。

2019年1月18日北日本新聞・webunより