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北電産業

「仕事に『女性の視点』期待され困惑」「女」のホンネ

女性特有の対人関係の悩みは一体どこから来るのでしょうか? 精神科医の水島広子さんは、女性の嫌な部分をかぎかっこ付きの「女」と呼び、深層心理に迫る鍵と位置付けます。連載「『女』のホンネ」では水島さんが「女」に注目しながら、トラブルの原因や処方箋を解説します。

■先生への質問

 食品メーカーに勤務する40代会社員。先日、課長に昇進しました。同期の中では管理職一番乗りです。上司は実力が評価されたと言ってくれましたが、昨今の女性登用の流れもあるようです。さて、内示を受ける際、「女性らしい視点を仕事に生かしてください」と激励されました。私は独身で、子どももいません。それまで男性社員並の働き方をしてきたと自負しているのに、今になって「女性らしさ」を期待され、正直困惑しています。周りは管理職としての私にどんな「らしさ」を期待しているのでしょうか。そしてどう応えればよいのでしょうか。そもそも、この言葉自体にもやもやしています。

■振り回されなくていい

 おそらく、この「女性らしい」という言葉にはそれほど振り回されなくてよいと思います。社内の訓示みたいなものでは、「もっともらしいこと」を言うのが慣例になっていますね。「全力で頑張って」などと言われることもありますが、全力で頑張ったらみんなが燃え尽きてしまいそうです。そこは敢えて形式として「全力で頑張ることを期待しています!」とか、「若手のホープとして期待しています!」などと激励するのです。



■男の言い訳

 このケースの場合、同期の中では管理職一番乗り。女性からの羨望(せんぼう)もあるでしょうが、女性登用の流れ、という現状では、むしろ男性の嫉妬の方が気になります。「女のくせに、どうして自分より先に?」と妬(ねた)ましく思っている男性たちには、「女性らしい視点を…」というのがギリギリの言い訳でしょう。

 出産など、確かに「女性でなければできないこと」はありますが、今まで女性として生きてきたことは確固たる事実です。結婚しなければ女性として認められないなどということもありません。男性社員並みの働きをしてきたことは事実だと思いますが、そこにはもしかしたら女性ならではのバランス感覚があって、うまくいってきたのかもしれません。

 今までの働きぶりで昇進したということは、そのままでよいということ。もちろん管理職になったのですから、プラスアルファの要素は必要ですが、「女性らしい視点」という言葉に振り回される必要はないと思います。

 そもそも上司は「女性らしい視点」が何なのかもわかっていないのではないでしょうか。でも、時節柄女性を登用しなければならなくなった。その中では最も優秀な人が選ばれた。男性から「なぜ自分でないの?」という嫉妬攻撃を受けるのが怖くて、「女性らしい視点」で逃げているようにも思えます。


■後輩女子に配慮


 それでも敢えて、「女性らしい視点」について考えてみると(本当に「男」そのものの女性もいますので、万人に当てはまるわけではありませんが)、「今まで女性登用がされていなかった」「同じだけ頑張っても男性の方が優遇された」「女性の意見は軽視された」などの経験があれば、後輩女子が同じような思いをしないように気を配ることはできるでしょう。いくら自分が男性並みに働いてきたと言っても、結局は男性が優遇されてきたのが今までの現実だったからです。

 あるいは、「女性のさらなる登用に」に向けて、プロジェクトを考えてみてもよいかもしれません。出産、育児など、女性ならではのハンディもあります。ご自身が結婚も出産もしていないとしても、ただの「男」になってしまうのはもったいありません。後輩にいろいろと話を聴いて、「どうすればもっとやる気になって職場に貢献できるか。どういう仕組みが最も効率的か」を考えてみてもよいと思います。


■職場に協調を


 また、女性はギスギスした環境が苦手だという人が多いです。女性は関係性の中で生きることが多いので、職場での人間関係を大切にする、ということもあります。そんな女性の気持ちを汲み取って、弱肉強食みたいな職場ではなく、協調の中で業績を上げられる職場を考えてみてもよいですね。

 自分がそこまで考えつかないのであれば、女性のプロジェクトチームを作ってもよいのではないでしょうか。そこでくみ上げた意見を、「女性らしい視点」として提案するのもよいと思います。

■水島さんが定義する「女」
性別としての「女性」を意味するのではなく、嫉妬深い、表裏がある、人のことを決めつけたがる、群れたがる、などいわゆる「女の嫌な部分」と言われるような性質のこと。男性に選ばれて初めて価値が生まれる、気が利くことを求められる、などの背景から作られてきた傷と考えられる。女性だけでなく、男性にも見られる性質である。
■水島広子さんの略歴
みずしま・ひろこ 精神科医。対人関係療法専門クリニック院長。慶応大医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。同大医学部精神神経科勤務を経て、2000年から2期5年間衆院議員を務めた。「女子の人間関係」「怒りがスーッと消える本」など著書多数。ことし1月、連載中の「『女』のホンネ」などを加筆修正した新著「困った悩みが消える感情整理法」をさくら舎から刊行した。1968年東京生まれ。

 

■質問を募集します

水島さんへの質問を募集しています。職場や家庭での人間関係の悩み、不安やストレスに感じていることをお寄せください。200字程度にまとめ、名前、住所、電話番号、年齢、職業を明記の上、メール(bunka1@ma.kitanippon.co.jp)で送ってください。掲載時は匿名となります。

12月21日北日本新聞・webunより