メニュー

「上司が自慢話ばかりでうんざり」 「女」のホンネ

女性特有の対人関係の悩みは一体どこから来るのでしょうか? 精神科医の水島広子さんは、女性の嫌な部分をかぎかっこ付きの「女」と呼び、深層心理に迫る鍵と位置付けます。連載「『女』のホンネ」では水島さんが「女」に注目しながら、トラブルの原因や処方箋を解説します。

■先生への質問
 40歳の派遣社員です。派遣先の上司(48歳女性)のことで相談です。基本的に悪い人ではないのですが、自分の話ばかりします。会話の際も必ずと言ってよいほど「私は…」と話題を自分のことへ持っていきます。内容は大半が自慢話です。また自分と異なる生き方には否定的で、そのような人を批判し、さげすむ発言をします。私などは格好の標的で、何かにつけ非正規の雇用形態や担当の職務(単純労務作業)についてバカにされうんざりしています。この上司への対処方法を教えてください。


■自慢は自信ないから

 自分の話ばかり、特に自慢話ばかりした場合、人からどう思われるかに思いが至らないという点、物事をとても少ない情報で決めつける点、多様な生き方を認めない点、非正規雇用というだけでバカにする点-などを見てみると、この上司の方は、頭の中で処理できることの量が少ないのではないかと思います。

 もちろん小さな子どもなどは自分が知っていることだけで判断しますので、結果としてこの上司と同じような行動をとるかもしれませんが、それはまだ小さくて知識が少ないから。狭い世界で生きられるのは、せいぜい20代前半まででしょう。人間、社会の中で30年も生きれば、自分も含めていろいろな人にそれぞれの事情があるということに気付くものです。

 48歳という年齢を考えると、それは学力や仕事の能力とはまた違った脳の特徴があるのだと思います。マルチタスクができない脳、とでも言いましょうか。自慢はしたいけれども相手の自慢も聞いてあげなければ、とか、この人は非正規で単純労務作業ばかりをしているけれども、そこに至るにはそれぞれの事情があるのだろうし、バカにするなんてもってのほか、など、いろいろな立場を考えることができないのです。

■注意の部屋に一つ
 私はそのような人のことを「注意の部屋に一つしか入らない人」と言っています。いろいろなことに注意を向け、いろいろな人に配慮をしながら話すのが成熟した大人と言えます。しかし、何歳になっても「注意の部屋」に一つしか入らない、それ以外のことを思いやるだけのスペースがない人がいるのです。

 基本的にはマルチタスクができる人の方が人間として生きやすいものです。いろいろなことを思いやることができ、人に安心感を与えます。ただ、マルチタスクができないのは生来のこと。本人に責任を負わせるのは厳しすぎるでしょう。「マルチタスクができないよね。だからこうしていこうね」と指導してあげた方がよいでしょう。

■「お気の毒に」
 このケースの場合、相手は上司ですから、「マルチタスクができなくて、この人なりに嫌われたり苦労したりがあるんだろうな。お気の毒に」でよいと思います。

 もう一つの考え方もあります。それは、この上司に自信がない場合。自信がある人は、謙虚ですし、多少ひがんだことを言われても、「そうですね」と相手に話を合わせることができます。だって、自分の方が自信もあって幸せなのだから、そう思えない人のことを「気の毒に」と思えるのです。

 そういう意味では、非正規労働者をバカにするなど、とんでもないことです。いかに、彼女に自信がないかがわかります。正規雇用であること「だけ」が、彼女の自慢なのでしょう。

■ストレスの標的
 彼女の目的は何なのでしょうか。他人に対して嫌な態度をとる人は、目的がある場合と、自分のストレスをただぶつける場合があります。非正規雇用の部下、となれば、ストレスをぶつけるのには格好の的なのでしょう。

 「悪い人ではない」ということは、嫌われてはいないということですから、適度な距離を保ち、もし何か言われたら、また「ああ、また少ない情報で決めている(処理している情報の量が少ない)」という目で見たらどうでしょうか。一つの論点しか頭に入っていない人の場合、反論したりすると、すごい勢いで反撃してくることもありますので、面倒なことになると思います。

 ■水島さんが定義する「女」
性別としての「女性」を意味するのではなく、嫉妬深い、表裏がある、人のことを決めつけたがる、群れたがる、などいわゆる「女の嫌な部分」と言われるような性質のこと。男性に選ばれて初めて価値が生まれる、気が利くことを求められる、などの背景から作られてきた傷と考えられる。女性だけでなく、男性にも見られる性質である。
■水島広子さんの略歴
みずしま・ひろこ 精神科医。対人関係療法専門クリニック院長。慶応大医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。同大医学部精神神経科勤務を経て、2000年から2期5年間衆院議員を務めた。「女子の人間関係」「怒りがスーッと消える本」など著書多数。ことし1月、連載中の「『女』のホンネ」などを加筆修正した新著「困った悩みが消える感情整理法」をさくら舎から刊行した。1968年東京生まれ。

■質問を募集します
水島さんへの質問を募集しています。職場や家庭での人間関係の悩み、不安やストレスに感じていることをお寄せください。200字程度にまとめ、名前、住所、電話番号、年齢、職業を明記の上、メール(bunka1@ma.kitanippon.co.jp)で送ってください。掲載時は匿名となります。

4月20日北日本新聞・webunより