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「子育て中の部下に女性上司が嫌み」「女」のホンネ

女性特有の対人関係の悩みは一体どこから来るのでしょうか? 精神科医の水島広子さんは、女性の嫌な部分をかぎかっこ付きの「女」と呼び、深層心理に迫る鍵と位置付けます。連載「『女』のホンネ」では水島さんが「女」に注目しながら、トラブルの原因や処方箋を解説します。

■先生への質問

育休明けで、保育園に通う1歳の男の子がいます。体調を崩しやすく、そのため出社が遅れたり、急に休まなければならないことがあります。成人した息子がいる50代の女性上司から「私が若い頃はそんな簡単に休めなった。良い時代になったわね」と嫌みを言われることがあります。彼女は両親と同居し、保育園の送り迎えも食事の用意もほぼ任せきりだったのを知っています。私は頼れる人が近くにいません。時代や社会が変わっているのに、自分を基準にされるのは困ります。どうすれば分かってもらえるでしょうか。

■トラブル避け相手尊重

結論から言えば、この女性上司に分かってもらえることはないように思います。というより、分かってもらう必要もないと思います。

イラスト・成田有希(アイアンオー)

■不便に不満

自分は実家の力を借りてやりくりしたわけですから、本当に苦労したわけではない。でもちくりと「私の頃は…」と言いたくなるのは、単に現在の不便(部下が子どもを理由に不規則な勤務になる)に不満を述べているだけなのだと思います。もっと懐が深い人であれば、「自分の頃は実家に全面的に支えてもらえたけれども、自力でやりくりしていて大変だろうな」と思ってくれることでしょう。

もちろん、その時代にはその時代なりに苦労もあったでしょう。「子どもがいるのに仕事を続ける」ということ自体が白い目で見られたのかもしれません。そういう意味で、その人も苦労していないとは言えませんが、胸襟を開いて、「私は物理的には実家にかなり頼れたけれども、当時は子どもがいるのに働くのか、という目で見られてきつかったわ。そういう意味ではいい時代になったわね」「私の頃は簡単に休めなかったから、結局実家におんぶにだっこになってしまったけど、本当はもっと自分でやりたかったわ」などと言ってくれれば、関係性が改善すると思うのですが、お話を聞く限り、そういう柔らかいタイプの人でもなさそうですね。

■自己防衛で反発

実害が「嫌み」だけなのであれば、「この人は、時代の変化とか、もっともらしいことを言っているけれども、要は現在、部下が子どものために不規則な勤務となることに単に不満を感じているだけなのだな」と思えば、それだけの話です。いちいち「嫌み」が出るのは、だいたい子どもの健康関連のことが突発的に起こるからでしょう。人間は、自分にとってネガティブなニュースが突然もたらされると、とりあえず自己防御したり反発的な態度に出たりするのです。

そんな人をそれ以上逆なでしても、関係性が悪化するだけで何も得るものはありませんから、「先輩方の努力があったから、社会が変わってきたんですよね。本当に、感謝しています」と言ってみる程度でどうでしょうか。もちろん、そんなことを本気で思う必要はありません。でも、仕事上の不都合が出ただけで「よい時代になったわね」などと嫌みを言ってくる人とは、できるだけトラブルを起こさないで、相手を尊重してあげるのがもっとも安全な方法です。

■相談という形も

もう少しは話が分かりそうな人であれば、「見事に仕事と育児の両立を成し遂げた先輩だからお話しするんですけど、育児との両立に悩んでいて…」と「相談」という形で尊重することも可能ですが、こんなに一方的に断罪するようなタイプの人では、「頼られた」という喜びよりも、「子どもが大きくなるまで仕事からは離れたら?」のような反応が返ってくるリスクもあり、それほどお勧めできません。しかし、いわゆる「性格が悪い」タイプでなければ、「相談」されれば一肌脱ごうと思ってくれる人もいるはずです。

全般に、「私が若い頃は…」が出てくるときは、「現在」、何かしら羨望(せんぼう)や不安があるとき。いちいち反応しないで、「こういう時代になったのは、先輩方のおかげです。本当に感謝しています。これからもいろいろと教育してくださいね!」と、相手を癒やす方向で接するのが最も安全だと思います。

■水島さんが定義する「女」
性別としての「女性」を意味するのではなく、嫉妬深い、表裏がある、人のことを決めつけたがる、群れたがる、などいわゆる「女の嫌な部分」と言われるような性質のこと。男性に選ばれて初めて価値が生まれる、気が利くことを求められる、などの背景から作られてきた傷と考えられる。女性だけでなく、男性にも見られる性質である。
■水島広子さんの略歴
みずしま・ひろこ 精神科医。対人関係療法専門クリニック院長。慶応大医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。同大医学部精神神経科勤務を経て、2000年から2期5年間衆院議員を務めた。「女子の人間関係」「怒りがスーッと消える本」など著書多数。ことし1月、連載中の「『女』のホンネ」などを加筆修正した新著「困った悩みが消える感情整理法」をさくら舎から刊行した。1968年東京生まれ。

 

■質問を募集します

水島さんへの質問を募集しています。職場や家庭での人間関係の悩み、不安やストレスに感じていることをお寄せください。200字程度にまとめ、名前、住所、電話番号、年齢、職業を明記の上、メール(bunka1@ma.kitanippon.co.jp)で送ってください。掲載時は匿名となります。

11月16日北日本新聞・webunより