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「ポテサラ論争」が映す社会① 女性に多くを求めすぎ―ドイツ出身のコラムニスト

 「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」。総菜コーナーで子連れの女性に高齢男性が言い放った一言がツイッターに投稿され、SNSを中心に議論が巻き起こった。女性に対する固定観念、世代間のギャップ…。「ポテサラ論争」から浮かび上がる日本社会の姿とは。

◆ポテサラ論争◆
 発端は7月にツイッターに投稿された目撃談。総菜コーナーでポテトサラダを買おうとした幼児連れの女性が、高齢男性から「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と絡まれていたという。13万件を超えるリツイートがつき、テレビのワイドショーでも取り上げられるなど話題になった。

この人に聞きたい」は折々の社会現象を深堀する北日本新聞のインタビュー企画です。今回のテーマでは
高齢者の心理に詳しい名古屋大大学院教授 川合伸幸さん
婚活を支援する「なんとおせっ会」会長代理 山田由理枝さん
にもインタビューをしています。


 

ドイツ出身日本在住のコラムニスト
 サンドラ・ヘフェリンさん(44)

女性に多くを求めすぎ

 「ポテサラ論争」はポテトサラダを買うのと作るのではどっちがおいしいか、コストパフォーマンスがどちらがいいかという「食べ物」の観点で主に議論されてきました。でもこれは「保守的な男性が『女性は〇〇するべき』と言った」というジェンダーの話。ポテトサラダという身近な例でジェンダー問題を示してくれたからこそ、話題になったと捉えています。

 日本の社会は、女性に対して求めるものが多いと思います。「ポテサラ」のように、母親には手作りが求められますし、子どもがいなければ「なぜ子どもを作らないのか」と言われる。「あるべき姿」から外れている人に一言言いたい人が多い。結婚しなよ、子ども産みなよ、2人目はまだ? 手作りしたら? きりがありません。

 「女性なら〇〇するべき」という決めつけがヨーロッパにないとは言い切れません。でも手作りを重視するのは日本特有だと感じます。日本の食文化は凝っていますよね。ドイツではカルテスエッセンという冷たい料理が市民権を得ていて、朝と夜はバターやハムを載せたパンとサラダ、チーズなどが普通。お昼は温かい食事を食べますが、サンドイッチやバナナなど冷たい食事のこともある。毎日同じものを食べている人も多い。

 仮にドイツで高齢男性が「母親なら家で作りなさい」と子連れの女性に言ったら、すごく反撃されて大げんかになります。お説教されてうつむいてしまい、見ていた人が後でツイッターに投稿というのは、日本ならではでしょう。

 そんなふうに知らない男性にお説教されることって、実際にはあまりないと思うんですよ。それよりもお盆や正月に旦那さんの実家に帰省して、年配の親戚に「3人目はまだなのか」「女ならもっとおつまみ用意しろ」などと言われたりしたときに言い返してほしいですね。それか、そもそも帰省しないか。さらっとかわすのが大人の対応なのかもしれませんが、そこでへらへら合わせてしまうと何も変わらないじゃないですか。

 「女性はこうあるべき」という期待に応えたところで、いいことってないと思います。料理を頑張ったばかりに毎回それを要求されたり、セクハラを優しくかわしたばかりにまたされたり。自分で自分の首を絞めちゃう。

 「ポテサラ」に関しても、本来性別に関係なく作りたい人は作ればいいし、買いたい人は買えばいい。女だから、子どもがいるからっていうのは変な話。言う人はいろいろなことを言いますが、「雑音」だと思って、惑わされずにわが道を行くのがいいんじゃないでしょうか。(聞き手・小山紀子)

サンドラ・へフェリン ドイツ・ミュンヘン出身。日独ハーフで「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」を運営。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」「体育会系 日本を蝕(むしば)む病」など。東京都在住。