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「下の子をかわいく思えず、冷たくしてしまう自分に悩んでいます」明橋大二の【子育て相談室】

明橋大二の部屋

質問 長男はとてもかわいいのですが、下の子の長女をかわいく思えず、冷たくしてしまう自分に悩んでいます。(30代、ママ)

 

明橋 このような悩みは、わりとよくお聞きします。まずアドバイスしたいのは、そういう自分を責めないでほしいということです。

親の愛情は無償の愛と言われますが、親子といえども、相性の合う合わないはあります。人間同士なのですから、仕方のないこと、あり得ることなんです。

相談者の方は「冷たくしてしまう」と言っておられますが、子どもが成長しているということは、小さいころからおっぱいをあげ、お風呂に入れ、着替えをさせ、病気になったら病院に連れて行くなど、そういうお世話をしてこられたのだと思います。親として当然のことと言われるかもしれませんが、それも親の愛情です。愛情が全くなかったら、そういうこともできないはずです。「愛情が湧かない」と自分を責めるより、日々やるべきことを淡々とやっていくことも大事な子育て。そんなに自分を責めなくてもいいのです。

人間関係は、時間とともに変化します。かわいいと思っていた上の子が中学生ぐらいになったら口もきかず、家の手伝いもせず、かわいくなくなる時がくるかもしれません。一方で、下の子は家の手伝いをしてくれて、さらに大きくなって、自分が病気になったら病院へ送り迎えしてくれるかもしれない。状況が変わることで、親子の関係も変わっていくこともあります。

自分をあまりにも責めてしまうと、下の子に向かい合うのが余計につらくなり、つらくなると余計にいらいらし、子どもにあたってしまうという悪循環になります。悩んでいること自体が、愛情の表れです。今は最低限やるべきことをやる、それでいいと思います。

それでも、どうしても自分の中でネガティブな気持ちが抑えられないという場合は、もしかしたら心の根深いところに理由があるかもしれません。それは多くの場合、同姓の家族、女性なら、母親、おばあちゃん、お姉さん、妹などの中で、関係が良くなかった人がいた場合です。その家族と、子どもの雰囲気が似ていたりすると、もともとの家族への恨みつらみが、子どもに投影されてしまうことがあるのです。

例えば、自分に妹がいたとします。母親が妹ばかりかわいがり、自分は「お姉ちゃんだからできるでしょ」と言われ、かまってもらえない。本当は妹がうらやましいのに、そういう気持ちを我慢して、思いを訴えることもなかった。表面上は仲良い姉妹だったが、心の中では妹への嫉妬やいらいらした気持ちがずっとあったー。そういう気持ちを積み残したまま、親になり子どもが生まれた時、本来、妹に向けていた気持ちが子どもに向いてしまうことがあります。自分の気持ちが十分に癒やされていなかったために、そういうことが起きてしまうのです。

ただ自分でも、そのような気持ちを積み残していたことに気付いていないので、どうして子どもを見ていらいらするのかが分からない。分からないから自分を責めて、さらにいらいらし悪循環となってしまうのです。

子どものせいではもちろんなく、自分が悪いのでもない。自分の寂しさを親に気付いてもらえなかったことに原因があります。そういう場合はカウンセリングが必要です。カウンセリングによって、いらいらの根源が分かり、寂しかった気持ち、つらかった気持ちが十分に癒やされれば、いらいらを子どもに向けなくてもよくなります。

別のパターンでは、しゅうとめとの関係が悪く、子どもがしゅうとめにそっくりで、しゅうとめへのいらいらが子どもに向いてしまうというケースです。親の傷つきがきちんと癒やされないと、そういうことが起こり得る。ほとんどの虐待が、こういうふうにして起きています。もし心当たりがあるのであれば、カウンセリングを受けてみるのも一つの手です。

今回の相談者の方は、悩みを何とかしようとしておられます。それはとても尊いことで、子どもを愛そうとしているからこそだと私は思います。

母親からの精神的虐待で声を失いながらも、さまざまな出会いによって成長していく女の子を描いた「ハッピーバースデー 命かがやく瞬間(とき)」(青木和雄作、金の星社)という本があります。母親が子どもを愛せない理由が分かりやすく描かれています。もし関心がおありでしたらお読みください。

 コメンテーターの皆さんへの相談、アドバイスへのご意見、また「うちも同じですよ」「うちはこうしてちょっと良くなりました」など共感やアドバイスなど、あなたの声をお待ちしております。ご意見はこちらから

 

明橋 大二(あけはし・だいじ)

真生会富山病院心療内科部長、「子育てハッピーアドバイス」シリーズ著者
1959年、大阪府生まれ。 京都大学医学部卒業。 国立京都病院内科、名古屋大学医学部付属病院精神科、愛知県立城山病院をへて現職。
精神保健指定医、小学校スクールカウンセラー、高岡児童相談所嘱託医、NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長。専門は精神病理学、児童思春期精神医療。

【ひとコト】子どもによっては、新しい環境に慣れるのに時間がかかる子がいます。親からなかなか離れない子に「1年生なんだから、お兄ちゃんになったんだから、しっかりしなさい」とあまり言うと、より不安になってしまいます。
学校から帰ってきたら、子どもとしっかり話す、またスキンシップの時間を取ることで、がんばっている子どもの気持ちをしっかりと受け止めてあげてください。

 

明橋先生の新著「HSCの子育てハッピーアドバイス HSC=ひといちばい敏感な子」が、1万年堂出版から発売されました。イラストは、コノコトで4コマ漫画&エッセー「敏感さは宝物 ななとひよこママのHSC子育て」を執筆するイラストレーターの太田知子さん。親の皆さんに向けて、HSCの知識と、子育てのスキルをまとめた「マンガで分かる」HSC解説本です。四六判、232ページ、1,296円(税込)。