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㉓私は弱虫(新1年生パクくん:その6)【私の出会った子どもたち-いじめと向き合ってきた「けん玉先生」の歩み-】

いじめ、不登校、暴力行為など、さまざまな問題を抱える子どもたち。元小学校長の寺西康雄さんは、彼らとけん玉を通して接することで心の扉を開いてきました。長年の教員生活で出会った子どもたちの姿から「いじめを生まない学級・学校づくり」を考えます。

 自分は見て見ぬふりをしたことはないか?
 なぜ見て見ぬふりをしたのか?
 これから、いじめを見たとき、どうすればよいのか?

 ナミコの詩「私は弱虫」を通して、子どもたち一人一人にこう問いかけてみたい。私はそう思い、他の十数編とともに「私は弱虫」を学校詩集に掲載することにした。

 さらに、この詩を自分のこととして読んでもらうために、詩集発行に先立って、いじめに関するアンケート調査を実施した。結果は以下のとおりである。

〇いじめられたことがある…はい47% いいえ53%
〇いじめを見たことがある…はい75% いいえ25%
〇いじめを見たとき、どうしたか
・止めた…20%
・先生に知らせた…20%
・いじめに加わった…10%
・何もしなかった…50% 

 いじめの現場にいた子どもの半数が傍観しており、止めることも、教師に伝えることもしていない。この事実を子どもたちに知らせたい。その上で、詩「私は弱虫」を自分自身の問題として捉え、共感しながら読ませたいと思った。

挿絵・金子浩子

 全校児童が体育館に集まった。私は学校詩集「つばさ」第2号を配布してから子どもたちに次のように話した。

 パクくんへのいじめはなくなりました。ケイコさんが止めてくれたからです。皆さんが「いじめないで!」と声を上げてくれたからです。

 先日、「いじめ」について調査させてもらいました。その結果についてお知らせします。
 (調査結果の説明)
 この結果を見て、とても心配なことがあります。この学校には、いじめを見たとき、何もしない人がたくさんいるということです。なぜいじめを見たとき、何もしないのでしょうか? 

 学校詩集「つばさ」第2号には「私は弱虫」という詩が載っています。いじめを見たとき、何もしなかったことが正直に書いてあります。この詩をもとに、いじめを見たとき、どうすればよいのかを学び合いたいと思います。
 (詩「私は弱虫」の朗読)

 ナミコさんは、今まで何度もいじめられた経験があります。だから、いじめられている人の辛い気持ちはよく分かっています。「いじめっ子」を許すことはできません。でも、これまで、いじめを見たとき、何もできませんでした。

 学校詩集「つばさ」創刊号に「パクくんをいじめないで」という詩が載っていました。ナミコさんは、これを読んだとき、いじめを見て見ぬふりをしないケイコさんに感心しました。これからは、自分もケイコさんのように勇気を出して、いじめを止めようと思いました。
 しばらくして、ナミコさんはいじめを見ました。でも、何もできませんでした。自分は「いくじなしだ」「弱虫だ」と思いました。

 皆さん、この詩を読んで、どう思いますか?この詩を書いたナミコさんのことをどう思いますか?

 

 私からの投げ掛けに体育館内は一瞬静まり返った。

〔付記〕事例はプライバシーへの配慮から登場人物を匿名とし、事実関係についても若干の修正が施してあることをお断りしておきます。
 

◆寺西 康雄(てらにし・やすお)◆

 富山県内の小・中学校と教育機関に38年間勤務し、カウンセリング指導員、富山県総合教育センター教育相談部長、小学校長等を歴任。定年退職後、富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センターに客員教授として10年間勤務し、内地留学生(小・中・高校教員)のカウンセリング研修を担当。併行して、8年間、小・中学校のスクールカウンセラーを務める。

 現在は富山大人間発達科学研究実践総合センター研究協力員。趣味・特技はけん玉(日本けん玉協会富山支部長、けん玉道3段、指導員ライセンスを所持)。