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県内 多胎児の母親に聞く やりがいの半面 孤立

  
愛知の事件「自分も紙一重」

 愛知県豊田市で2年前、母親が生後11カ月だった三つ子の次男を死なせた事件を機に、双子や三つ子といった多胎児を育てる大変さにあらためて注目が集まっている。多胎児育児の実態はどんなものなのか。富山県内で三つ子、双子を育てる母親たちを取材すると、やりがいを感じる半面、孤立し育児の悩みを抱え込む姿が浮かび上がってきた。(小山紀子)

 愛知県で事件を起こした母親は、泣きやまない次男を畳に2度たたきつけて死亡させたとされる。裁判所は一審、二審とも懲役3年6カ月の実刑を言い渡した。事実上一人で育児を担い「産後うつ」の状態だったことに加え、多胎育児の過酷さを考慮すべきとして刑の減軽を求める署名活動も行われた。

生活一変眠れず

 「事件を起こした親を責めることはできない」。こう話すのは、小学4年の長男と5歳の三つ子を育てる古村雅春(ちはる)さん(38)=高岡市。愛知の事件のニュースを見て「自分も紙一重だった」と感じたという。

 三つ子が生まれてから生活が一変した。産後は2時間おきに授乳、おむつ替えをしなければならない。一日を通し三つ子のおむつ交換と授乳が繰り返し続いた。昼夜を問わず代わる代わる泣き、生後4カ月までは2時間ほどしか眠れなかった。

 夫や近くに住む義母の手助けは得られたものの、日中は一人で4人を連れて外出できず家の中に閉じこもった。家と車を何度も往復して子どもをベビーシートに乗せ、ミルクやお湯など大量の荷物を準備して…。そんなことを考えると、外に出たいという気持ちが消えていった。

 1歳半になると保育園に預け、近くの介護施設で働き始めた。外に出ることで、精神的に楽になった。「あのまま閉じこもっていたらうつ病になっていたかもしれない。今は友人や職場の人、家族の支えで楽しく育児ができている」と笑顔で話す。

産後の記憶がない

 黒部市の宇奈月子育て支援センターでは月1回、多胎児サークル「楽nicoツインズ」が開かれる。双子や三つ子を育てる母親が集まり、悩みを打ち明けたり、情報を共有したりしている。

 「大変すぎて、当時の記憶がない」。メンバーの一人で1歳の双子がいる栗原裕子さん(32)=同市=は産後間もない頃を振り返る。夫は群馬県、自身は金沢市出身で、近くに頼れる身内がいない。どちらかの子どもがぐずり、寝られない日が続いた。

 苦しい状況は、周囲の手を借りることで乗り切った。実母が金沢から週1、2日手伝いに来てくれたほか、手が回らないときは家事代行サービスの会社に掃除や食事の準備を依頼した。市のファミリー・サポート・センターには入浴の手伝いを頼んだ。

 楽nicoツインズの存在を知ったのもこの頃。同じ立場の母親と話していると、気が楽になったという。「家にこもり、赤ちゃんの泣き声をずっと聞いているとつらい。限界になる前に、頼れる先を探しておくことが大切」と呼び掛ける。

経験者を家庭に派遣

 厚生労働省は新年度、多胎児を育てる家庭向けに育児サポーター派遣事業を始める。育児経験者を家庭に派遣するほか、同じ悩みを抱える親同士の交流会などを開く。

 親への支援に乗り出す自治体も増えてきた。県内では黒部市が本年度、従来第3子から贈っていた出産祝い金を双子、三つ子が生まれた世帯にも支給対象を広げた。富山市と射水市では、子育て支援センターが多胎児向けのイベントを実施している。

 日本多胎支援協会(神戸市)代表で、双子を育てる布施晴美さんは「多胎の子がいるお母さんは、周囲に遠慮して頑張りすぎてしまうことが多い。『手伝って』と気軽に言える環境づくりが重要だ」と話した。

2020年3月15日北日本新聞・webunより