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「行動する女性を傍観するだけ」 「女」のホンネ

女性特有の対人関係の悩みは一体どこから来るのでしょうか? 精神科医の水島広子さんは、女性の嫌な部分をかぎかっこ付きの「女」と呼び、深層心理に迫る鍵と位置付けます。連載「『女』のホンネ」では水島さんが「女」に注目しながら、トラブルの原因や処方箋を解説します。

■先生への質問

 最近は「#MeToo」「#KuToo」などハラスメントに声を上げる女性が増えています。私も似たような経験があり、彼女たちの勇気ある行動を心の中では応援しているのですが、現状は傍観しているだけです。何もできない自分が歯がゆいです。私に活を入れてください。


 

■SNS使い応援

 人にはそれぞれの役割があります。その役割は、社会的立場や、その人の性格や能力によってさまざまです。

 おっしゃる通り、勇気を持って声を上げている女性たちが増えています。これは社会的にはとても望ましいことで、誰かが発言しない限り社会は成熟していきません。

 しかし、すべての人が同じようにできるか、というとそうではありません。陰ながら応援する、という人は実際にとても多いです。

 私はかつて衆議院議員だったので、応援してくれる形がさまざまだということを知っています。役割ということで言えば、政治家はまさに「声を上げるべき立場」にいると言えます。

 でも、「出るくいは打たれる」で、声を上げた人を人間的におとしめるような人たちもいます。直接の関係がないプライバシーを暴かれ非難されることも少なくないのです。


■見えない苦労

 遠くから見ていると、声を上げている人たちは、とてもしっかりとした自己を持ち、勇気を持っているように見えます。それは確かに一面の真実です。しかし、彼女たちも一人一人の人間です。声を上げることによって傷つけられたり、親しかった人が離れて行ったり、と見えない苦労をしているはずです。

 特に、今までハラスメントをしてきた側の「既得権益」がある人は、自分の権利が失われることに敏感になりますから、本当にひどい攻撃をしてきたりすることもあります。

 社会的にとても力強く行動していても、つい気弱になる瞬間は、どんな人にもあります。みんな生の人間なのですから、ひどいことを言われたり人が離れて行ったりすることには心が痛むのです。

 そんなときに支えとなるのが「陰ながら応援している人たち」です。社会に向かって声を上げることができなくても、声を上げている女性たちに「応援しています」というメッセージを届けることは、とても力強いサポートなのです。目に見えて応援してくれている人のほかに、潜在的に応援してくれている人がこんなにいる、というのは、自信を取り戻すことにつながります。

 私のかつての選挙区はとても保守的なところだったので、雰囲気がとてもよくわかります。表立って声を上げるわけでなくても、「応援しています」と言われると、とても心強く感じ、やっぱり自分は間違っていなかったのだな、と再確認できるのです。

 できれば、声を上げている人たちに直接、SNSなどを使って、「応援しています」メッセージを送ってあげてください。匿名のメッセージであっても、そこに込められた温かい支援を、感じ取ることができます。これは大きな力となります。
 

■穏やかでいる

 あとは、身近なところで、そういう話題が出たときに、穏やかでいる、ということも重要です。女性の権利向上の運動は、えてして「ヒステリック」と言われたりするものです。穏やかに、「私、心の中で応援しているんですよ」とサポートすることによって、#MeTooの人たちが、決して単なるヒステリーではなく良識を持って行動している、人間として当たり前のことを主張している、という理解につながります。

 ポイントは「穏やかに」というところです。

 声を上げる人たちは、穏やかにできないこともあります。それが偏見につながることも少なくないのです。

 せめて自分の身近なところでは、これは良識についての話なのだ、ということが見て取れるように穏やかに振る舞っていただければ、結果として大きな応援になると思います。

■水島さんが定義する「女」
性別としての「女性」を意味するのではなく、嫉妬深い、表裏がある、人のことを決めつけたがる、群れたがる、などいわゆる「女の嫌な部分」と言われるような性質のこと。男性に選ばれて初めて価値が生まれる、気が利くことを求められる、などの背景から作られてきた傷と考えられる。女性だけでなく、男性にも見られる性質である。
■水島広子さんの略歴
みずしま・ひろこ 精神科医。対人関係療法専門クリニック院長。慶応大医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。同大医学部精神神経科勤務を経て、2000年から2期5年間衆院議員を務めた。「女子の人間関係」「怒りがスーッと消える本」など著書多数。ことし1月、連載中の「『女』のホンネ」などを加筆修正した新著「困った悩みが消える感情整理法」をさくら舎から刊行した。1968年東京生まれ。


■質問を募集します

水島さんへの質問を募集しています。職場や家庭での人間関係の悩み、不安やストレスに感じていることをお寄せください。200字程度にまとめ、名前、住所、電話番号、年齢、職業を明記の上、メール(bunka1@ma.kitanippon.co.jp)で送ってください。掲載時は匿名となります。

2019年12月20日北日本新聞・webnより