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「夫婦の家事分担 母と意見に違い」「女」のホンネ

女性特有の対人関係の悩みは一体どこから来るのでしょうか? 精神科医の水島広子さんは、女性の嫌な部分をかぎかっこ付きの「女」と呼び、深層心理に迫る鍵と位置付けます。連載「『女』のホンネ」では水島さんが「女」に注目しながら、トラブルの原因や処方箋を解説します。

■先生への質問

 夫婦の家事負担で母と意見が合いません。両親は共働きでしたが、食事の用意を含め家事の大半は母が担っていました。私は家事負担を平等にするべきだと思っており、実際にそうしていますが、母からは「妻としてどうなの?」と文句を言われます。母の考えを全面的に否定できない自分もおり、後ろめたさを感じます。私の中にある新しい価値観と古い価値観の折り合いをどうつければいいのでしょうか。

「後ろめたさ」乗り越える

 社会を変えるのは、まさにこういうところからなのでしょうね。

 男女平等の実現を阻むのは、個人の中にある古い価値観へのとらわれも大きいと思います。特に、自分が育てられた環境や方針は、「よく育ててもらった」と思っている人ほど、無意識のうちに肯定しており、違うやり方をとることに不安があるものです。結婚、出産などを機に、自分の中に意外と保守的な面があることに気づく人もいるでしょう。


成功体験

 お母さんの世代では、共働きでも家事は基本的に妻がする、というのがある意味当たり前だったと思います。そんな中で家庭を守りつつ育てたお嬢さんがこうしてしっかりとした社会人になっているのですから、お母さんは妻として、母として、「成功体験」をしていると言えます。

 今は情報化社会とは言え、特に結婚など個人的なことについては、多くの人が自分の経験をもとに考えるものです。特に「成功体験」は、よい道しるべになるでしょう。

 自分の経験がないところには、どうしても不安が出てきます。

 不安というのは、安全が確保されていないときの感情ですから、未経験のことには不安になって当然です。ですから、「妻としてどうなの?」と文句を言う(不安を訴える)お母さんの気持ちも理解できます。自分は本当に平等な家事分担などしたことがないので不安なのです。

 そして、いまだ成功体験のないご本人が、それを「全面的に否定できない」のも当然です。


不安の押し付け


 時代が進歩し、男女がより平等になるためには、こうした不安や「後ろめたさ」を乗り越えていく必要があります。それぞれが自分の中の古い価値観に対して、自分の考えをもとに折り合いをつけていくのです。そもそも、夫婦そろって同じように働いているのに、妻だけが家事を担うというのは変な話です。また、いつまでも家事は女性中心であることが、社会のさまざまな歪(ゆが)みとなって表れていることも、事実です。お母さんとの関係性の中では「後ろめたい」と感じるかもしれませんが、例えば自分の娘にも同じようなことを求めて悩ませるだろうか、後世まで引き継いでいきたい価値観なのか、と考えてみると、お母さんはただ自分の不安を押し付けてきているだけ、ということが理解できると思います。

 また、今誰よりも大切な存在は、夫でしょう。2人で話し合って今の生活があるのですから、それに後ろめたさを感じるのは2人の関係性を否定するようなことにもなってしまいます。お母さんが今のパートナーなのではなく、夫がパートナーなのです。「夫もこのやり方を支持している」ということはきちんと頭に置いておきたいものです。夫は、新しい時代を作るための大切なパートナー。これからも大切にして、力を合わせていきたいですね。

 何にせよ、後ろめたさを感じながら暮らすと、仕事に集中できなくなったりもしますし、全体に元気がなくなるものです。ただでさえ家事を分担しながらの仕事は大変なことです。限られたエネルギーと時間を何に使うか、夫婦でよく相談して、信頼関係の中、質のよい生活を送っていただきたいです。
 

■水島さんが定義する「女」
性別としての「女性」を意味するのではなく、嫉妬深い、表裏がある、人のことを決めつけたがる、群れたがる、などいわゆる「女の嫌な部分」と言われるような性質のこと。男性に選ばれて初めて価値が生まれる、気が利くことを求められる、などの背景から作られてきた傷と考えられる。女性だけでなく、男性にも見られる性質である。
■水島広子さんの略歴
みずしま・ひろこ 精神科医。対人関係療法専門クリニック院長。慶応大医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。同大医学部精神神経科勤務を経て、2000年から2期5年間衆院議員を務めた。「女子の人間関係」「怒りがスーッと消える本」など著書多数。ことし1月、連載中の「『女』のホンネ」などを加筆修正した新著「困った悩みが消える感情整理法」をさくら舎から刊行した。1968年東京生まれ。


質問を募集します

水島さんへの質問を募集しています。職場や家庭での人間関係の悩み、不安やストレスに感じていることをお寄せください。200字程度にまとめ、名前、住所、電話番号、年齢、職業を明記の上、メール(bunka1@ma.kitanippon.co.jp)で送ってください。掲載時は匿名となります。

2019年11月15日北日本新聞・webunより