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「中学生の娘が、教室にいると緊張すると言って登校拒否になっています」明橋大二の【子育て相談室】

明橋大二の部屋

明橋 大二(あけはし・だいじ)

真生会富山病院心療内科部長、「子育てハッピーアドバイス」シリーズ著者
1959年、大阪府生まれ。 京都大学医学部卒業。 国立京都病院内科、名古屋大学医学部付属病院精神科、愛知県立城山病院をへて現職。
精神保健指定医、小学校スクールカウンセラー、高岡児童相談所嘱託医、NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長。専門は精神病理学、児童思春期精神医療。

【ひとコト】子どもによっては、新しい環境に慣れるのに時間がかかる子がいます。親からなかなか離れない子に「1年生なんだから、お兄ちゃんになったんだから、しっかりしなさい」とあまり言うと、より不安になってしまいます。
学校から帰ってきたら、子どもとしっかり話す、またスキンシップの時間を取ることで、がんばっている子どもの気持ちをしっかりと受け止めてあげてください。

 

質問  「中学生の娘が、教室にいると緊張すると言って登校拒否になっています。家ではテレビを見たり、読書をしたりして過ごしています。朝起きると頭が痛いというので、起立性調節障害ではないかと心配です。本人は受診を嫌がります。どう対応したらいいでしょうか。(40代、ママ)」

                    

明橋 起立性調節障害は、小児科でよく使われる病名です。朝起きられない、頭が痛いなどの体の症状があり、血圧を上げる薬などが出たりします。

心療内科医は、この体の症状は「原因」でなく「結果」と考えます。精神的につらいことがあるので体の症状に出る。だから心の原因を解決しない限りは、体の症状も治ってこないのではないかと。つまり学校に行きたくない、学校に行くのが非常につらい状況にあるから、朝起きられないし、学校に行くことを考えると頭痛がしてくるというわけです。

では、なぜ学校に行くのがつらい状況になっているのか?
原因は大きく分けて、学校、家庭的背景、本人の性格に分けられます。

学校が原因のケースでは①いじめ②友達関係で仲間外れにされている③先生との相性が良くない④勉強についていけない、ということが考えられます。小学生の場合は先生との関係(先生が怒ってばかりなど)が原因のことが多く、中学校は友達関係で学校に行きづらくなることが多いです。

家庭的な背景では、たとえばお父さんが暴力を振るう人で、両親が離婚して、お父さんが出て行った後に不登校になったりすることがあります。お父さんがいなくなったことで、緊張が解けて、疲れが出て不登校になるのです。このケースは、疲れが癒えれば、また元気になります。

本人の性格が原因で想定されるのは「ひといちばい敏感な子」、Highly Sensitive Childの略で「HSC」とも呼ばれます。ただHSCは病気でもなければ障害でもない一つの特性、持って生まれた性格です。

編集室 どのような特徴があるのでしょうか。

明橋 感覚的に敏感です。ちょっとした物音でも聞きつけます。においや味、肌触りにも敏感。ちくちくしたものが嫌で、洋服のタグなんかも全部切り取っていたりします。

人の気持ちにも敏感で、人がつらい思いをしていることを察知して悩んでしまう。お母さんが、疲れてため息をつくと「お母さん大丈夫?疲れていない」と声をかけてくれる、そういう優しさがあります。ただ気にしなくていいところまで気になるので、疲れがたまるんです。

編集室 学校ではどういうことで、つらくなるのでしょうか。

明橋 例えば、先生がやんちゃな子を叱っている声を聞くと、怖くなります。また友達が別の子の悪口を言っているのを聞くとつらくなり、自分ももしかしたら、ああいう風に言われているのではと気になります。やんちゃなことを平気でやる生徒も、見ていて許せない気持ちになります。

私は、特に中学2,3年生女子の人間関係は、この世で最も過酷な人間関係だと思います。劣っても、目立ってもいけない。すぐにうわさされます。ラインでいつの間にか悪口を書かれることもあります。大人になれば、仕事と割り切ることもできるかもしれませんが、学校は、相性や価値観が同じでもない人と密室で常に一緒にいなければならない場所。思春期ですから情緒的にも不安定でピリピリ、カリカリしている。そんな中を生き抜くことは、簡単なことではありません。

今回の相談者の娘さんが、クラスに緊張していられないというのは、本当にそうなんだと思います。おそらく敏感な子なんじゃないでしょうか。人間関係で神経を使って疲れているのでしょう。中学生の女の子が家に帰ると機嫌悪く、親が何を聞いても答えないということがありますが、疲れて、家に帰ってまでしゃべりたくない、そんな余力は残っていないんです。

疲れ切ってしまっているなら、休養が必要です。学校を休んで、テレビを見たり読書をしたりするのは、元気を取り戻すために必要なプロセスだと思います。しっかり休めば元気になってくる。それが半年後か1年後かは分かりませんが、休めば必ず元気になります。

高校になれば、いろんな選択肢があります。不登校の子を受け入れてくれる私立の学校、定時制、通信、技能連携校など、本人に合った学びを見つけ、高校を卒業する頃には元通り元気になっているでしょう。

統計では中学3年生で完全不登校の子どもの5年後を調べたところ、ほぼ80%が学校へ行っているか、働いているかしています。確かに精神的な病気などがあって、20%は長引くケースもありますが、逆に言うと、そういうことがない限りほとんどの子どもが元気になっていきます。

編集室 受診については、どうしたらいいでしょうか。

明橋 本人が受診を嫌がるなら、無理に連れてくることはありません。

まずは親だけでも相談窓口を訪れてはどうでしょうか。例えば県総合教育センター(富山市)や各市町村の教育センター、射水市子どもの権利支援センター「ほっとスマイル」にも相談窓口があります。一度、相談し、医療機関を受診したほうがいいと言われたら受診するというのでいいと思います。私は、不登校の子どもを何百人と診てきましたが、本当に心配はいりません。みんな元気になっていきます。

 

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明橋先生の新著「HSCの子育てハッピーアドバイス HSC=ひといちばい敏感な子」が6月下旬、1万年堂出版から発売されます。イラストは、コノコトで4コマ漫画&エッセー「敏感さは宝物 ななとひよこママのHSC子育て」を執筆するイラストレーターの太田知子さん。親の皆さんに向けて、HSCの知識と、子育てのスキルをまとめた「マンガで分かる」HSC解説本です。四六判、232ページ、1,296円(税込)。