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「妹が『平等』を主張する」「女」のホンネ

女性特有の対人関係の悩みは一体どこから来るのでしょうか? 精神科医の水島広子さんは、女性の嫌な部分をかぎかっこ付きの「女」と呼び、深層心理に迫る鍵と位置付けます。連載「『女』のホンネ」では水島さんが「女」に注目しながら、トラブルの原因や処方箋を解説します。

■先生への質問

 独身の45歳会社員。実家で両親と暮らしています。3歳下の妹が「きょうだいは何でも平等」を主張してきて困っています。例えば、両親が私の扶養家族になっていることで私が得をしているとか、食費や光熱費を使った分払っていないとか、お金に関することが多いです。確かにそういう面はありますが、一緒に住んでいることで気苦労も多いですし、経済的な負担もあります。妹は結婚していて、子どもはもうすぐ成人です。生活も比較的余裕があります。大人になれば環境も立場も変わり、「平等」は理想にすぎません。どうすれば分かってもらえるのでしょうか。

不安・悩みがあるのかも

 ここまで生活環境が違うのに、形ばかりの「平等」を求められても困りますね。妹さんは生活にも比較的余裕があるということですから、本当にお金に困って、というわけでもないのだと思います。

 ただし、はたから見れば、既婚者、子どもももうすぐ成人、というのは幸せと安定の象徴のように見えますが、実際に何が起こっているのかはわかりません。夫婦間はうまくいっているのか。お子さんに問題はないのか。老後を考えたときに、何か特別な不安があるのではないか。

 人が一見理不尽な権利を主張するときというのは、不安も含めて、何か困っているときだと言えます。満たされて安心しているときには、そんな主張はしないものだからです。

 ですから、目標は、「平等」は理想にすぎないとわかってもらうこと、というよりも、妹さんが何に困っていて、どう協力してあげられるかを考えることではないでしょうか。

 もしかしたら離婚の危機にあって、今後の住まいの不安があるのかもしれません。そんなときは、ご実家で安定して暮らしているお姉さんがうらやましく思えるものです。あるいは、お子さんに問題があって、自立までの道のりがまだまだ見えないのかもしれません。この頃の若者のメンタルヘルスを考えると、十分にありうる話だと思います。


■現状を聴く

 「平等」について同じ土俵で説得を試みようとするよりも、「この頃どう?」「うまくいっている?」「心配事があったら、二人だけのきょうだいなんだから打ち明けて」などとまずは妹さんの現状を聴いてみるところからではないでしょうか。

 妹さんが素直に悩みを打ち明けてくれたら解決の道が開けるでしょう。

 しかし、ここまでの姉妹の関係性が、例えば「いつもお姉ちゃんだけひいきされている」などという性質のものだったら(少なくとも、妹さんから見て)、悩みを打ち明けてもらって一緒に解決、というわけにもいかないと思います。

 そういう場合には、「本当に困ったことがあったら言ってね」という程度で、あとはそれぞれの人生と割り切るしかないと思います。同じような関係性でも「親の面倒を押し付けておいて、ずうずうしい」と扱っている人もいるでしょうから、ご相談者は優しい方なのでしょうね。

 ただ、その優しさを、妹さんに理解してもらって仲良くやっていく、という方向に発揮しようとすると、お互いのストレスが増すだけかもしれません。ですから、優しさを、「こんなに理不尽な主張をしてくるくらい、何か見えない悩みがあるのかな」と考えてあげるくらいにとどめてあげた方がよいと思います。


■専門家に相談

 考えてみれば、子どもがもうすぐ成人、という年頃には、特に目立った問題はなくても、多くの女性が人生を考え直すとき。それまで子育てに夢中だったのが、目標を失って、中にはうつ病を患う人すらいます。妹さんの細かい訴えからは、もしかしたら背後に精神的な問題があるのかもしれないとも考えられます。さすがに妹さんに「あなたは精神的におかしいから、精神科に行ったら?」などと言うことはできないでしょうから、あまりにもお困りのようでしたらご自身で「妹さんについての相談」として専門家を訪れてもよいと思います。

 そこまででもないのであれば、いろいろ言われても「そういう部分はそのとおりね」くらいの感じで、ただ穏やかに(しかし距離をとって、振り回されず)話を聴いていくことで乗り越えられるかもしれません。

■水島さんが定義する「女」
性別としての「女性」を意味するのではなく、嫉妬深い、表裏がある、人のことを決めつけたがる、群れたがる、などいわゆる「女の嫌な部分」と言われるような性質のこと。男性に選ばれて初めて価値が生まれる、気が利くことを求められる、などの背景から作られてきた傷と考えられる。女性だけでなく、男性にも見られる性質である。
■水島広子さんの略歴
みずしま・ひろこ 精神科医。対人関係療法専門クリニック院長。慶応大医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。同大医学部精神神経科勤務を経て、2000年から2期5年間衆院議員を務めた。「女子の人間関係」「怒りがスーッと消える本」など著書多数。ことし1月、連載中の「『女』のホンネ」などを加筆修正した新著「困った悩みが消える感情整理法」をさくら舎から刊行した。1968年東京生まれ。

質問を募集します

水島さんへの質問を募集しています。職場や家庭での人間関係の悩み、不安やストレスに感じていることをお寄せください。200字程度にまとめ、名前、住所、電話番号、年齢、職業を明記の上、メール(bunka1@ma.kitanippon.co.jp)で送ってください。掲載時は匿名となります。

2019年6月21日北日本新聞・webunより